「WiMAXはIPv6に対応していて、それを使えば通信速度が速くなるらしい」
こんな話を聞いて、WiMAXとの契約を検討している方もいるのではないでしょうか?
しかしあなたは、IPv6がどんなもので、なぜ通信速度が速くなるのかしっかり理解していますか?
せっかく使うなら、しっかり違いを理解したほうが良いですよね。
またIPv6は、WiMAXと契約すれば無条件で利用できるものではないので注意しましょう。
今回は、IPv6の基本的な説明をしたうえで、WiMAXで利用する方法について解説。
この記事を読めば、IPv6について正しく理解したうえで、WiMAXでiPv6を利用できるようになります。
少し難しい話も分かりやすく解説しているので、ぜひ最後までお付き合いください。
※注意
IPv6の利用は、WiMAXの通信速度のアップを約束するものではありません。
理論的に、「通信速度が速くなる可能性もある」という程度の話です。
この先は、この点を了承したうえで読み進めてください。
Contents
WiMAXはIPv6に対応している?
今から新規契約する分には、WiMAXはIPv6に対応しています。
しかし、「UQ WiMAX(ユーキュー・ワイマックス)」の公式ページのよくある質問にある、IPv6の対応についての回答は以下のとおりです。
回答の冒頭で「WiMAXはIPv6に対応していない」と書かれているので、混乱する人もいるでしょう。
WiMAX回線はかつてWiMAXで使用されていた旧回線で、現在は「WiMAX2+(ワイマックス・ツープラス)回線」が使われています。
WiMAXとWiMAX2+の回線の違いについて詳しく知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:WiMAX WiMAX2+(仮)
IPv6とは?3つのメリットを解説
そもそも、IPv6とは何のことなのでしょうか?
次世代のインターネット・プロトコル(=インターネットの通信規約)の規格です
現在は、「IPv4」が標準規格となっています。
この規格がIPv4からIPv6に変わることで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、IPv6の3つのメリットについて説明していきます。
1.IPアドレスの数がほぼ無限に!
IPv6の最大のメリットは、個々に割り当てられる「IPアドレス」の数がほぼ無限大になること。
もっと分かりやすく言えば、インターネット上の住所のようなものです
住所があるから荷物を送れるのと同じで、インターネットでもIPアドレスがあるからこそ、ウェブサイトと通信した際、必要な情報をパソコンやスマホに送信してもらえます。
つまりIPアドレスがなければ、ネットワーク通信はできません。
IPv4の場合、IPアドレスは「XXX.XXX.XXX.XXX」の形式で割り当てられており、各XXXには0~255まで、256通りの数字を割り当てられます。
この場合、割り当て可能なIPアドレスの総数は、256の4乗で約43億個です。
世界の人口は60億人を超えているので、これでは1人に1つずつのIPアドレスを振り分けることもできません。
さらにIPアドレスは、個人ではなく機器によって振り分けられます。
例えば、パソコンとスマホ、タブレットをそれぞれ一台ずつ持っている人は、一人で3つのIPアドレスを使っていることになるのです。
将来的にはこうした機器だけではなく、物のインターネットを指す「Iot(Internet of Things)」も普及すると見られています。
Iotが普及すれば、一人ひとりが使うIPアドレスがますます多くなるため、IPv4ではIPアドレスの枯渇が問題になっているのです。
そこで台頭した新しいインターネット・プロトコルの規格が、IPv6。
IPv4のIPアドレスの総数が256の4乗なのに対し、IPv6のIPアドレスの総数は約43億個の4乗。
計算すると、約340澗(かん)個になるのです。
340澗個は、340兆×1兆×1兆個。
2.ネット上のセキュリティが強化される
IPv6には、「IPSec(IP Security Architecture)」という機能が標準搭載されています。
IPSecは内容が非常に複雑なので、ここでは分かりやすい例を使って説明していきます。
例えば通常のIPが、AさんがBさんの家に直接手紙を持っていくことだとしましょう。
一方でIPSecでは、そこが本当にBさんの家か「認証」したうえで、誰にも見られないよううにBさんの家まで「トンネル」を掘って行き、手紙を渡します。
さらにその手紙に書かれた内容は、誰に読まれても平気なように、Bさんにしか解読できない「暗号」で書かれているのです。
上記はあくまで例ですが、実際のIPSecでは「認証」「トンネリング」「暗号化」などの技術を駆使して、この例に近いようなことをネット上でしています。
IPSecではこれらの技術によって、ネット上のデータの改ざんや偽造、なりすましを防止可能。
つまりIPSecが標準搭載されているIPv6では、ネット上のセキュリティがグッと強固になるのです。
3.通信速度が速くなる
巷では、IPv6を利用すると通信速度が速くなるという認識が広まっています。
IPv6には、以下2つのインターネット接続方式があります。
- PPPoE(PPP over Ethernet)方式
- IPoE(IP over Ethernet)方式
IPoE方式はPPPoE方式に比べて、回線の帯域幅が広くなっています。
帯域幅の狭いPPPoE方式では回線が混雑しやすいのですが、帯域幅の広いIPoE方式では混雑が防げるため、通信速度はIPoE方式の方が速いのです。
PPPoE方式を一車線しかない道路にたとえるなら、IPoE方式はその数百倍もの車線を持つ道路。
インターネットの利用者を車に、通信速度を車の走行速度にたとえるなら、どちらの道路の方が速く走れるかは明らかです。
NTTコミュニケーションズによれば、PPPoE方式の通信速度が最大200Mbpsなのに対し、IPoE方式は最大100Gbps(100,000Mbps)。
IPoE方式の通信最大速度は、PPPoE方式の実に500倍です。
(あくまで理論値であり、実際にこの速度が出ることはありません)
そしてこのIPoE方式に唯一対応しているのが、IPv6。
そのため、IPv6に対応していても、IPoEに非対応なら、通信速度のアップは期待できません。
UQ WiMAXでは、IPv6だけでなく、IPoEにも対応しています。
IPv6のデメリット
ここまでIPv6のメリットについて説明してきましたが、これにはデメリットもあります。
IPv4とIPv6は、それぞれウェブサイトへの通信経路が異なります。
そのため、例えばIPv4で通信されているウェブサイトは、IPv6の対応機器では閲覧できません。
しかし、この問題をクリアできる技術もあります。
さらにその技術は、WiMAXにも対応しているものです。
では次に、WiMAXも対応しているその技術について説明していきましょう。
WiMAXが対応しているIPv4/IPv6デュアルスタックとは?
IPv4とIPv6の互換性の問題をクリアできる技術は、「IPv4/IPv6デュアルスタック」です。
IPv4対応のウェブサイトと通信する際はIPv4で、IPv6対応のウェブサイトと通信する際はIPv6で通信可能です。
つまり、1つの機器にIPv4とIPv6の2つのモードがあって、通信先に応じて自動でモードが切り替わる。
これこそが、IPv4/IPv6デュアルスタックなのです。
UQ WiMAXは、このIPv4/IPv6デュアルスタックに対応しています。
IPv6に対応しているWiMAXの機種は?
IPv6を利用するためには、機器もIPv6に対応している必要があります。
しかし、これからWiMAXと契約するのなら、この点を考慮する必要はありません。
なぜなら現在新規契約で購入できる機種は、いずれもIPv6に対応しているからです。
2019年11月時点で、WiMAXで購入できるモバイルルーター(ポケットWi-Fi)の機種は以下2種類あります。
- W06
- WX05
これらはどちらも、IPv6に対応した機種となっています。
WiMAXでIPv6を利用したい場合の注意点
WiMAXでIPv6を利用したい場合、注意点もあります。
WiMAXでいうプロバイダとは、販売代理店のようなもの。
WiMAXでは、WiMAXという一つのサービスを複数のプロバイダがそれぞれ提供しているのです。
月額料金やプラン内容などは異なるものの、どのプロバイダと契約しても、WiMAXのサービス内容や性能には変わりありません。
ただし、ことIPv6に関しては、非対応のプロバイダでは利用できなくなっているのです。
IPv6への対応を公表しているUQ WiMAXと違い、他のプロバイダではIPv6に対応しているかどうかを公表していません。
そのため、IPv6を利用したいのなら、プロバイダに問い合わせて確認してみましょう。
WiMAXのIPv6の設定方法
IPv6を利用するためには、WiMAX側での設定が必要。
WiMAXでIPv6を設定する方法は、以下の2ステップです。
- 接続機器のブラウザで設定ツールを起ち上げる
- 設定ツールでIPタイプを選択→保存
ここでは、それぞれの方法について説明していきましょう。
1.接続機器のブラウザで設定ツールを起ち上げる
まずは、スマホやパソコンをWiMAXとWi-Fi接続します。
その状態で、「Internet Explorer」や「Safari」などのウェブブラウザを起ち上げましょう。
ウェブブラウザを起ち上げたら、WiMAXの機種に応じて、以下のURLを入力します。
機種 | 入力するURL |
W06 | http://speedwifi-next.home |
WX05 | http://192.168.179.1 |
以上で、WiMAXの設定ツールが起ち上がります。
ログインするには、「ユーザー名」と「パスワード」の入力が必要。
W06の場合のユーザー名とパスワードは、以下のとおりです。
- ユーザー名…「admin」
- パスワード…IMEIの下5桁
「IMEI」は、WiMAXの端末の裏面に記載してあります。
WX05の場合のユーザー名とパスワードは、以下のとおりです。
- ユーザー名…「admin」
- パスワード…任意の文字列
WX05ではログインの前に、自分で任意のパスワードを設定することになります。
設定完了後、ログイン画面に移動するので、上記のユーザー名と自分で決めたパスワードを入力しましょう。
2.設定ツールでIPタイプを選択→保存
設定ツールが立ち上がったら、それぞれ以下の手順で進めましょう。
【W06の場合】
- 「設定」をクリック(タップ)
- 「プロファイル設定」をクリック(タップ)
- 「IPタイプ」から「IPv4 & IPv6」を選択
- 「保存」をクリック(タップ)
【WX05の場合】
- 「ネットワーク設定」をクリック(タップ)
- 「プロファイル設定」をクリック(タップ)
- 「IPタイプ」から「IPv4 & IPv6」を選択
- 「設定」をクリック(タップ)
以上で、WiMAXの機種でIPv6の通信ができるようになりました。
WiMAXでIPv6を使った人の口コミを紹介
理論的にはWiMAXでIPv6を利用すれば通信速度が速くなるはずなのですが、実際のところはどうなのでしょうか?
ここではその疑問を解消するため、実際にWiMAXでIPv6を利用している人の声を紹介していきます。
口コミ①速度制限時の速度が改善した
こちらの口コミによると、IPv6に設定した場合、通常時の通信速度はそれほど変わらないものの、速度制限がかかったときの通信速度には大きな改善が見られたそう。
WiMAXには、月間のデータ通信量が無制限の「ギガ放題プラン」があります。
ギガ放題では、直近3日間で10GB以上のデータ通信をすると、翌日の18時から翌々日の2時までの間、速度制限がかかるのが難点。
ギガ放題で速度制限がかかったときの通信速度は、約1Mbpsです。
約1MbpsでもYouTubeの標準画質くらいなら視聴できますが、場合によっては通信速度がさらに遅くなることも。
口コミ②速度制限時にIPv6対応のサイトなら速度が改善
こちらも、ギガ放題の速度制限時にIPv6がおよぼす良い影響に対する口コミです。
こちらの口コミによれば、WiMAXの速度制限中は、IPv4対応のサイトでは通信速度が遅いものの、IPv6対応のサイトであれば速度が改善されるとのことでした。
2つの口コミに共通しているとおり、IPv6は通常時の通信速度というより、速度制限がかかったときの速度の改善に役立つようです。
そのため、3日で10GB以上のデータ通信をする可能性があるなら、IPv6は大いに役に立ってくれるはず。
どれくらいのデータ通信で10GBに達するかについては、以下の記事が参考になります。
関連記事:WiMAXの3日間10GB制限は気にする必要ない?通信速度制限の内容を解説
IPv6に対応しているWiMAXのプロバイダ
WiMAXでIPv6を利用するためには、IPv6に対応しているプロバイダと契約する必要があります。
そもそもWiMAXは、UQ WiMAXの運営会社である「UQコミュニケーションズ」のサービスです。
他のプロバイダは、WiMAXの販売代理店にすぎません。
UQ WiMAXでは、2019年10月から、新プランである「ギガ放題」の提供を開始しました。
ギガ放題のプラン内容は、以下のとおりです。
契約期間 | 2年間 |
月額料金 | 3,880円 |
端末代金 | 15,000円 |
契約解除料 | 1,000円 |
※各種料金は2019年11月時点のもの
UQ WiMAXの月額料金は、他のプロバイダと比べて、特別安いわけではありません。
端末代金が無料のプロバイダも多いなか、端末代金が15,000円かかる点もネックです。
しかしUQ WiMAXには、以下のメリットもあります。
- 契約期間が2年と短い
- 契約解除料が破格の1,000円
WiMAXの多くのプロバイダでは、契約期間が3年となっています。
契約期間の満了前に解約した場合、高額な契約解除料がかかるため、契約期間は短い方がおすすめ。
契約解除料の額はプロバイダや解約時期にもよりますが、9,500~19,000円のところが多くなっています。
その点、UQ WiMAXは契約期間が2年と短く、契約解除料も1,000円しかかかりません。
そのため、途中で解約する可能性があるのなら、UQ WiMAXは十分おすすめのプロバイダだと言えるでしょう。
まとめ
ここまで、WiMAXとIPv6について解説してきました。
WiMAXでIPv6を利用したい人にとって、特に重要なポイントは以下の3点です。
- IPv6とIPoE方式に対応していれば、通信速度が速くなる期待もできる
- UQ WiMAXは、IPv4/IPv6デュアルスタックとIPoE方式に対応
- IPv6に非対応のプロバイダも多い
IPv6でも、IPoE方式に対応していなければ、通信速度は速くなりません。
UQ WiMAXでは、IPv6とIPoE方式の両方に対応しています。
しかし他のプロバイダでは、IPv6に非対応のところがほとんど。
仮にIPv6に対応していたとしても、IPoE方式に対応していなければ意味がありません。
そのため、UQ WiMAX以外のプロバイダと契約してIPv6を利用したい場合は、IPv6だけでなく、IPoE方式にも対応しているか確認しておきましょう。